井上洋介「でんしゃえほん」(ビリケン出版)より 2000年
絵本、タブロー、漫画―鬼才の画業を今ここに!
奇想天外な発想が炸裂する独創的な世界を描いた絵本画家・井上洋介が、2016年2月、惜しまれつつ84歳で亡くなりました。鬼気迫る描写に愛嬌と哀愁、ナンセンスを同居させた独自の画風で、一貫して人間の本質を描き出した井上は、絵本のほか、漫画、広告、舞台美術など多彩な分野で活躍しました。
本展では、広く愛されてきた『くまの子ウーフ』をはじめ、予想を超えた展開を見せる創作絵本、見る人を震撼させる妖怪絵本など、各年代の代表的な絵本原画のほか、少年時代に体験した戦災の記憶をもとに、生涯描き続けたタブローなども多数展示し、井上洋介の画業を紹介します。
初期から晩年までの絵本原画を多数公開!
初めての絵本『おだんごぱん』(1960年)から、ベストセラーの『くまの子ウーフ』などのほか、「卵」「たわし」「ちょうつがい」など、日常で気になったものをテーマに、独自のユーモアと奇想天外な発想で創作した自作絵本の数々を公開します。
戦争を描き続けたタブローの世界
油彩や水彩、墨、鉛筆、インクなど、多様な画材を使って生涯タブローを描き続けた井上の自宅には、今も500点を超える作品が遺されています。少年時代に体験した爆弾の恐怖や飢餓の記憶が内在する圧巻のタブロー群を展示します。
ナンセンスが炸裂する漫画の世界
1950年、武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)に在学中に「読売新聞夕刊」に漫画を投稿したことを機に、井上洋介は、数多くの漫画雑誌に意欲的に作品を発表しました。漫画集『サドの卵』『箱類図鑑』『ナンセンス展』の3冊から一枚漫画(複製画)を展示し、エログロナンセンスを貫く漫画の世界も紹介します。
井上洋介 Yosuke Inoue
1931年東京赤坂に生まれる。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業。大学在学中から新聞や雑誌に漫画の投稿を始め、1951年に独立漫画派に参加。1955年第7回読売アンデパンダン展に初出品。以後、日本アンデパンダン展等に出品を重ねる。1965年第11回文藝春秋漫画賞、1969年第4回東京イラストレーターズ・クラブ賞、1988年『ぶんぶくちゃがま』で第37回小学館絵画賞、1994年『月夜のじどうしゃ』で第25回講談社出版文化賞絵画賞、2001年『でんしゃえほん』で第6回日本絵本賞大賞、2013年『ぼうし』で第3回JBBY賞などを受賞。
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