「ちひろ没後40年―世界中のこどもみんなに平和としあわせを-ちひろの願い」展開催中

ちひろ美術館・東京が建つこの地、練馬区下石神井はいわさきちひろが亡くなるまでの22年間を過ごした場所です。
ちひろは1974年に55歳の若さで亡くなりました。亡くなってから、今年で40年の節目を迎えます。ちひろ美術館では、改めてちひろが願ったことを見つめなおし、展示を通してお伝えしていきます。

世界中のこどもみんなに平和としあわせを
ちひろが遺したこのことばは、今も私たちの胸に切実に響いてきます。
今回の展覧会では、このことばに象徴されるちひろの願いをお伝えしています。
展示室1では「戦争の絵本」、「いのちの輝き」、「あかちゃん-母のまなざし」の三つのテーマでちひろの絵とことばをご紹介しています。

今回の展示のタイトルにもなっているちひろのことばが記された作品(写真中央)。
ちひろの作品のなかで最も大きい作品のひとつです。
ちひろ自身の手による手書きの文字から、当時のちひろの切実な想いが伝わってきます。

ちひろが描いた3冊の戦争をテーマにした絵本原画のほか、子どもたちのいのちの輝きをとらえた作品、絵本『あかちゃんのくるひ』の原画を展示しています。

1974年6月23日に描かれたこの作品は、ちひろの絶筆となりました。

当時、入院していたちひろは、1枚の絵を仕上げる体力がなくなっていました。
依頼されていた雑誌の表紙のため、息子に家から描きかけの絵を持ってきてもらい、この絵を選んで、目と口に絵筆で色をさしました。
あかちゃんの無垢な瞳や表情には、かわいいもの、美しいものを愛し育み、未来そのものであるいのちを守りたいというちひろの想いが重ねられているように思います。

展示室3では、ちひろの自伝的絵本『わたしのえほん』の原画と初期の素描から、ちひろの歩みをたどっています。自筆原稿などの資料も展示しています。
ちひろが結婚の際に夫と取り交わした誓約書をちひろ自身が日記に書き写したものを展示しています。そこには次のような項目も含まれています。
一、お互いの立場を尊重し、特に藝術家としての妻の立場を尊重すること

ちひろが絵を描き続けた背後には夫とのこんな約束があったのですね。

社会全体が戦争に巻き込まれていく時代に青春を過ごしたちひろ。
ちひろの絵は、ともすると声高に叫ぶ声にかき消され、見過ごされてしまう大切なものはなにかを静かに問い続けています。
この機会にぜひ、ちひろとちひろの絵に逢いにきてください。
(M.H)