ラチョフ展の見どころ紹介③ 絵本『てぶくろ』:原画の魅力と絵本未収録のシーン

ちひろ美術館・東京で開催中の企画展「生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界」について、展示担当学芸員が、その見どころを全6回で紹介します。

第3回
絵本『てぶくろ』:原画の魅力と絵本未収録のシーン

ちひろ美術館は、ロシア国内を除き、ラチョフのまとまった作品を有する唯一の美術館です。1998 年の追悼展以来、28 年ぶりのラチョフ展となる本展では、絵本『てぶくろ』の原画6点と、未収録のラストシーン1点を含む、ラチョフのコレクション全 32 点を一堂にご覧いただけます。


『てぶくろ』の原画は、ぜひ絵本と見比べてみてください。
ラチョフの長い画業のなかで、その画風は大きくふたつの時代に分けられます。『てぶくろ』に代表されるのが、前半の特徴である黒い輪郭線です。鉛筆ではなく、画材用のニスに浸した木炭を細く削って使い、濃淡や太さを自在に調整していました。迷いのない線で、動物の姿態の特徴を写実的に描き出しています。水彩の色彩も鮮やかで、背景の森が、時間経過とともに美しい紅に染まっていくようすが見てとれます。

未収録のラストシーンにもご注目ください。絵本では、冒頭と同じ、手袋だけの場面が最後のページに使われていますが、ラチョフは犬が登場する習作も描いていました。絵本づくりに対するラチョフの工夫が感じられる貴重な作品です。

先日、来館してくれた子どもたちに、「どちらのラストシーンが好き?」と質問したところ、「犬が描かれている方がいい!」という、ラチョフさんが聞いていたら困ってしまいそうな声があがりました。みなさんも、ぜひ絵本と見比べて、ご意見をお聞かせください。

「私の作品が日本の美術館に永久に保存され、日本のみなさんに見ていただけることは幸せです」
ラチョフはこう話し、『てぶくろ』を含むたくさんの作品をちひろ美術館に託してくれました。生誕120年という節目の年に、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。

▽開催中の展覧会 3月1日(日)~5月10日(日)
生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界
ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―