「ちひろ 本を読む人 描く人」担当学芸員のつぶやき①
現在安曇野ちひろ美術館では、秋の展覧会「ちひろ 本を読む人 描く人」を開催しています。
秋といえば、スポーツの秋?食欲の秋?それもいいけれど、やっぱり、読書の秋、芸術の秋よねえ、という方にぜひ見て頂きたいのが本!展。本を読むことの楽しみやよろこびが伝わればいいな、という思いで準備しました。本展の見どころをいくつかご紹介します。
①初展示作品!

いわさきちひろ 本を読む母と子、本を抱える男の子 1962年
こちらの作品をご覧になった方はいらっしゃいますか?実は今回初めて原画が展示される作品なのです。『ね、おはなしよんで』(童心社)の表紙に、1962年の出版時から、2000年に現在の新装版に変わるまで、40年近く使われていた絵なので、もしかしたらどこかで見て、記憶にある方もいらっしゃるかもしれませんね。
ちなみに、表紙(背表紙)の文字は、ちひろ自身によるもの。手書きならではのあたたかみが伝わってきます。

『ね、おはなしよんで』(童心社)表紙
『ね、おはなしよんで』(童心社)背表紙
ロングセラーのこの本は、絵本ではなく、子どものための読みものや詩が30以上も集められたものです。
中身はほぼモノクロで絵も少なく、表紙絵だけフルカラーです。それを知っていたのかどうか、ちひろは、ベージュ色の背景に、淡い色の服を着た母と娘、そして目を惹く鮮やかな色の表本を描いています。ふたりの視線は本に注がれていて、どんなお話を読んでいるのか気になります。
いっぽう、裏表紙に描かれているのは、本を抱えた小さな男の子。本はかなり大きく、厚みもあるようですが、彼の指先からは、本を落とさないようにしっかり支えているようすが分かります。
似たポーズをちひろは何度か描いており、1970年の雑誌の表紙絵にも本を抱える少女が描かれています。この作品は、2007年の公共広告機構の読書推進の電車内のつり広告にも使われました。

いわさきちひろ 本を抱える少女 1970年
この秋、好きな本を抱えて、ゆっくり読んでみませんか。
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