「ヒロシマ🍅トマト 司修展」学芸員のつぶやき④
現在開催中の「ヒロシマ🍅トマト 司修展」を、展示担当学芸員がご紹介します。
今回は、司修の手がけた宮沢賢治の童話とその技法について。
本展では、宮沢賢治のさまざまな童話のために司が描いた作品を展示しています。
司が賢治の作品に関心をもったのは、『宮沢賢治童話集』(宮沢清六、堀尾青史 共編、実業之日本社、1969年)という厚い本のための絵を頼まれたのがきっかけでした。

司修『宮沢賢治童話集』(実業之日本社)より 1969年
司は木口木版で描こうと考えていたところ、画材店でスクラッチボードに出会い、それを使うことにしました。スクラッチボードとは、ボール紙に石膏を薄く塗り、その上に粒子の細かい墨が塗布してある紙です。黒い背景に細い線をひいたようすは、あたかも版画のように見える効果があり、目をひきます。司が「黒いスクラッチボードは、どんな風に描いても光を感じる画面になる」と記しているように、この技法で描かれた展示中の『絵本 銀河鉄道の夜』(偕成社、2014年)のための作品からは、宇宙の惑星の輝きが伝わってきます。

司修『絵本 銀河鉄道の夜』(偕成社)より 2014年
司は賢治の童話のみならず、生き方にも共鳴し、繰り返し東北を訪れています。賢治の故郷を歩きながら、戦争や災害で亡くなった死者を想い続けている司。1冊1冊全力で挑んだ作品の数々を会場でご覧ください。
▽開催中の展覧会
2025年5月16日(金)~7月21日(月・祝)
ヒロシマ🍅トマト 司 修 展
アンデルセン生誕220年 ちひろと見つめるアンデルセン
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