学芸員による「あ・そ・ぼ」展 見どころ紹介⑦ こころの色

企画展「いわさきちひろ ぼつご50ねん こどものみなさまへ あ・そ・ぼ」の見どころをご紹介します。

展示室4「こころの色」というコーナーでは、ちひろの色使いに注目しています。作品の色から、絵のなかの子どもたちの心象を考えてみましょう。

例えば、こちらの作品「まきばの うし」。牛と子どもたちは、牧場にいるのでしょうから、背景は緑か茶色が自然ですよね。しかし、ちひろが選んだのは鮮やかな赤!

いわさきちひろ 「まきばの うし」 1969年

企画協力の森口佑介氏は、「心理学の研究によると、赤い色は、『回避』を意味します。子どもたちの、接近したいけど、回避してしまう心情を表現しているように考えられます」と語りました。

「こわくないよ ほっとけよ こっちみてる きちゃだめだよ だけど やさしい めよ」
ちひろはこの絵にこんな詩をつけました。大きな牛はちょっぴりこわい……。でも気になる……。揺れ動く子どもの心を、ちひろは直感的に、赤い色彩と水彩のにじみで表したのでしょう。

「こころの色」では、赤、黄、緑、青……と色相が移り変わるように作品を展示しています。SNSでも、少しずつ色の異なる作品を紹介してゆきますので、どんな「こころの色」か、想像してみてください。

◆いわさきちひろ ぼつご 50 ねん こどものみなさまへ あ・そ・ぼ(~10/6)