[表紙の作品]いわさきちひろ 黄色い風船を持つ少年 1968

風船を持った少年は、なにを考えているのでしょうか。左上には三人の子どもが配され、少年の上にはパステルで描かれた子どもの落がきが重ねられています。この絵は、雑誌「子どものしあわせ」の表紙として描かれたもので、ストーリーはありません。少年が過去に描いた落がきを思い出しているのか、あるいはこれから描くものを考えているのか、左上の三人はこちらに向かってくる友だちなのか、過去の自分なのか……。一枚の絵から幾通りもの物語が想像されます。ちひろは、しばしば人物の上に画面の層を重ねる描き方をしていますが、これは、子どもの想像する世界を視覚的に表しているのかもしれません。