[表紙の作品]いわさきちひろ 「外で朝ごはんを食べるふたり」 1970年 『となりにきたこ』(至光社)より

幼いころのちひろと同じ愛称を持つ少女「ちいちゃん」が、隣に引っ越してきた男の子と友だちになるまでを描いた至光社の絵本『となりにきたこ』の一場面です。それぞれの家の庭に出て朝食をとり始めたふたりが、互いの存在を気にする素振りを見せています。一度、この絵本を鉛筆と墨で完成させた後、やはり色がほしいと思ったちひろは、画材をパステルに変え、大きなストロークの線を使って描き直しました。鉛筆の段階でふたりの間に描いていたフェンスも省略し、余白にしています。新たな試みを行ったこの絵本について、ちひろは「思いもかけない絵本ができました」と語っています。