[表紙の作品]いわさきちひろ 自画像(30歳頃) 1940年代後半

ちひろは第2次世界大戦後、駆け出しの画家だった20代後半に、集中して自画像を描いています。身近なモデルとして鏡に映る自分を描いたというだけではなく、社会の大きな変化のなかで懸命に自己をとらえようとする意志が、この時期の自画像群にはみなぎっています。
荒々しい筆致で描かれた多くの自画像とは違い、穏やかな印象を与えるこの自画像は、7歳半年下の青年・松本善明と出会って結婚し、人生の転機を迎えた30歳前後のころのものです。母となってからは、息子のスケッチが増えるにつれて、次第に自画像は描かなくなっていきました。