2010.3.1 /[表紙の作品]いわさきちひろ 「草むらの小鳥と少女」 1971年

春のやわらかな緑のなかで、少女は息をひそめて鳥に近づき、心を伝えるように、手折った花をそっとさしだしています。少女がもう一歩、近づいたなら、小鳥
は驚いてサッと飛び立ってしまうかもしれません。そんな一瞬の光景をとらえたこの絵からは、少女と小鳥の間に吹き抜けるやさしい春のそよ風までも感じられ
ます。画面左側に鉛筆で大きく描かれたナズナは、異なる画面を重ね合わせる映像の手法のように、私たちを春の野山へといざなう役目を果たしています。そし
て、その後方に描かれた小鳥のくちばしと、少女が手に持ち、髪に飾った花の黄色が画面に軽やかなリズムを生み出しています。