[表紙の作品] いわさきちひろ 「帽子の少女」 1970年

ちひろは、1970年に絵本『となりにきたこ』(至光社)を全場面パステルだけで描きました。この年に集中して、パステルを線描に使った少女像を描いています。器用であるがゆえに、絵が小さくまとまってしまうことを悩みとしていたちひろは、パステルの荒く太い線に力を得て、新たな表現を試みます。手首を画面から離した大きなストロークで、動きを拾ったパステルの線は、ちひろの絵にのびやかな動きと広がりをもたらしています。この絵では、少女の髪を動きのある線でとらえ、いきいきとした表情を生んでいます。細かな描写を大胆に削ってうまれた余白は、夏の強い陽ざしを想起させます。