[表紙の作品]いわさきちひろ 焼け跡を見つめる少年 1967年 『わたしがちいさかったときに』(童心社)より
ちひろは1967年、広島で被爆した子どもたちの詩や手記に絵をつけた『わたしがちいさかったときに』を発表します。絵本制作の背景には原爆の惨禍を風化させず、ベトナム戦争に抗って反戦運動に参加する若い世代に戦争の実相を伝えたいとの思いがありました。ちひろは自分なりの表現を追求し、負傷した体や惨状を具体的に描写するのではなく、被爆後に広島に生きた子どもや家族の深い悲しみを鉛筆と薄墨で描きました。焼け野原となった広島の街を見つめる少年の絵は、原爆で両親を亡くした男児の手記に添えたもので、「せんそうはいやだ。たたかいはいやだ。ぼくはそう思う!」と結ばれています。
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