
いわさきちひろ 赤い毛糸帽の女の子『ゆきのひのたんじょうび』(至光社)より 1972年
この秋、ちひろ美術館(東京・安曇野)では、みなさんが好きなちひろの絵で構成する展覧会を両館で同時開催します。
本展のために、3月から、その絵にまつわるメッセージとともにリクエストを募り、7月末までに、2000件を超えるたくさんの応募が届きました。
一番多くのリクエストがあった作品は「赤い毛糸帽の女の子」です。カーネーションを持った子どもがお母さんに抱きついている「母の日」や、小さな両手をいっぱいに伸ばしてあそぶあかちゃんがこちらを見つめる「おつむてんてん」などにも、多くの応募をいただいています。大切な人と過ごした時間を思い出したり、幼いころの自分や家族の姿を重ねたり、絵のなかの子どもたちの心情や未来を想像したり――ちひろの絵に寄せられたことばからは、ひとりひとりの人生や思いが浮かび上がってきます。
没後47年経った今も、身近に感じてくださる方々の記憶のなかにちひろの絵は生き続け、そして、時間や場所を越えて、新たな世代へとつながっていきます。
本展では、届いたメッセージとともに、ちひろの作品をピエゾグラフで紹介します。みなさんの大切な思いが集まってできた展覧会をお楽しみください。

母の日 1972年

おつむてんてん 1971年

黄色い傘の少女 1969年

緑の風のなかで 1973年

あごに手をおく少女 1970年

戦火のなかの少女
『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)より 1972年

緑の風のなかの少女 1972年

バラと少女 1966年

貝をならべる少年 1967年

踊るカーレン『あかいくつ』(偕成社)より 1968年
ちひろ美術館のアーカイブと「ピエゾグラフ」
ちひろの作品の多くは、描かれてから50年近い歳月が経っています。ちひろ美術館は、長年にわたって作品の保存に努めてきましたが、淡くやわらかな色彩の水彩画は脆弱で、時間の経過にともなう紙の劣化、絵の具の退色は避けられません。
そこで、2004年より、その時点の作品の状態をデジタル情報として記録し、保存していくアーカイブを進めてきました。同時に、そのデジタル情報をもとにして、ピエゾグラフの制作を進めています。ピエゾグラフとは、耐光性のある微小インクドットによる精巧な画像表現で、ちひろの繊細な水彩表現を高度に再現しています。
17年にわたるアーカイブの成果をご覧ください。
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