エフゲーニー・ラチョフ(ロシア) 走る鳥 1965年
ちひろ美術館は世界の絵本画家たちの絵本の魅力を伝えていますが、本展では少し角度をかえて、絵本の世界を飛び出した創作活動を紹介します。
エフゲーニー・ラチョフは、動物を主人公にしたロシア民話の絵本で、日本でもよく知られている画家です。シベリアで野生の動物に親しんで育ったラチョフは、動物の形や動きを知り尽くしていました。「林の中を歩くのが好きで、枝や、根を眺めていると、自然に動物の形が見えてくる」といい、この今にも駆けだしそうな鳥も、林で拾った木に手を加えてつくられました。
レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロなど著名な画家たちの人生を描いた絵本が日本でも翻訳出版されているビンバ・ランドマン『ジョットという名の少年 羊がかなえてくれた夢』は、ルネサンスの出発点にたつ画家・ジョットの少年時代を描いた絵本です。彼女はこの絵本の全場面を三連祭壇画の形に再構成し、伝統的なテンペラの技法を用いて描きました。よく見ると、師のチマブーエからテンペラの手ほどきを受ける場面も描き込まれています。この作品は聖書の物語を祭壇画に描いたジョットへのオマージュでもあるのでしょう。
ほかにも、紙という素材の魅力を自在に引き出すクヴィエタ・パツォウスカー(チェコ)や、木やブリキなどの素材を用いていきいきした動物をつくり出すユゼフ・ヴィルコン(ポーランド)、愉快な人や動物を流木からつくり出した荒井良二(日本)の作品も紹介します。5人の個性的な画家たちの、自由な発想から生まれた造形をお楽しみください。
SNS Menu