わたしは動物の絵をかくのが大好きです。
わたしは動物に洋服を着せたり、ステッキを持たせたりと、人間のような性格を与えています。各々の動物に人間的なイメージを重ねて見るのが好きだからです。キツネにはずる賢さ、クマには人の良さなど……。そうした想像をしながら絵をかくと、楽しくて楽しくて時のたつのを忘れてしまいます。
エフゲーニー・ラチョフ 1990年(84歳)
『ねことつぐみとおんどり』(宮川やすえ 訳/学習研究所(学研)、1990年)あとがきより

エフゲーニー・ラチョフ 『てぶくろ』(福音館書店)より 1950年
ウクライナ民話絵本『てぶくろ』で知られるロシアの画家エフゲーニー・ラチョフ(1906-1997)は、リアルな動物たちに民族衣装を着せ、人間の性格を巧みに重ね合わせた独自の動物民話を数多く描きました。代表作である『てぶくろ』は、日本では1965年に内田莉莎子の翻訳で刊行されて以来、世代と国境を超えて子どもたちに読み継がれています。2022年にロシアがウクライナへ侵攻し、今なお戦争終息の兆しが見えないなか、『てぶくろ』は、ウクライナという国を身近に感じられる絵本、共生と平和を考えるきっかけとなる絵本として、改めて注目されています。本展では、生誕120年を記念して、ロシアとウクライナ、ふたつの国に暮らし、その生涯を子どものための絵本に捧げたラチョフの全コレクション作品を展示します。
あわせて、ラチョフが生きた、ふたつの大戦と革命、世界初の社会主義国家の誕生と崩壊という激動の時代のロシアの絵本の歴史をひもとくとともに、ちひろ美術館コレクションのなかから、色あせない魅力を放つ東スラブの民話の世界を紹介します。
展覧会の見どころ
①およそ 30 年ぶりの開催 ラチョフのコレクション全 32 点が一堂に!
ちひろ美術館は、ロシア国内を除き、ラチョフのまとまった作品を有する唯一の美術館です。1998 年の追悼展以来、28 年ぶりのラチョフ展となる本展では、立体作品を含むラチョフのコレクション全 32 点を一堂に展示します。

エフゲーニー・ラチョフ ロシア民話「マーシャとくま」 1965年

エフゲーニー・ラチョフ ロシア民話「つぼのおうち」 1959年

エフゲーニー・ラチョフ ロシア民話「つるとさぎ」 1965年
②ウクライナ民話絵本『てぶくろ』から、ラチョフの動物民話の魅力に迫る
おじいさんが落とした手袋で暮らすことにした、くいしんぼねずみ。すると「ぼくもいれて」「わたしもいれて」と、はやあしうさぎ、おしゃれぎつねたちが次々にやってきて……!? ラチョフの代表作である絵本『てぶくろ』は、日本でも 1965 年の翻訳出版以来、子どもたちからの絶大な支持を得て、国内の発行部数は 330 万部を超えています。本展では、『てぶくろ』の絵本原画 6 点と未収録のラストシーン 1 点を展示。ラチョフの動物民話の魅力に迫ります。

絵本『ウクライナ民話 てぶくろ』 (内田莉莎子 訳/福音館書店、1965年)
③ちひろ美術館コレクションでめぐる民話絵本の世界
ふたつの大戦と革命、世界初の社会主義国家の誕生と崩壊。ラチョフは激動の時代を生きた画家でした。展示室 2 では、ロシアの絵本の歴史をひもとくとともに、ちひろ美術館コレクションのなかから、東スラブの民話の世界を紹介します。困難な時代のなかにあっても、自らの表現の道を模索し、絵本を通して子どもたちに豊かな文化を伝えたいと願った画家たちの活動にご注目ください。

タチヤーナ・マーヴリナ 狼に乗って空を飛ぶイワン王子 1950年

出久根育 『マーシャと白い鳥』(偕成社)より 2005年

ヴィクトル・ドゥヴィードフ『せむしのこうま』より 1991年
エフゲーニー・ラチョフ
Евгений Рачёв(1906-1997)
ロシアのトムスクに生まれる。幼少期を自然豊かなシベリアで過ごし、野生の動物に親しむ。1928年にクバン美術師範学校を卒業、翌年キーウの出版社で、挿し絵を描き始める。同時期にレーベデフやエフゲーニー・チャルーシンの絵本に出会い感銘を受ける。1936年、モスクワの児童文学出版社の招致を受けて移住し、以後精力的に動物絵本の制作に取り組むようになる。第二次世界大戦従軍を経て、戦後、動物たちに人間的性格を重ねた表現を取り入れた民話絵本を次々に発表。代表作に『てぶくろ』『マーシャとくま』(ともに福音館書店)『まほうの馬』(岩波書店)など。
SNS Menu