聖コージズキンの誘惑展開催記念 コージのスキな絵本

(ちひろ美術館・東京にて2015年5月24日まで 展示開催)
今回はスズキコージさんの選んだ本10冊をコージさんの文章とともにお送りします。
(絵本ジャーナルPee Boo 8 1992年より著者の許諾を得て一部転載)

『3びきのくま』
『3びきのくま』
L.N.トルストイ・文 バスネツォフ・絵 小笠原豊樹・訳

出版社:福音館書店
出版年:1962年

この本は、20数年前、ロシア語ができる宮沢賢治みたいな性格?の友人が、持っていた本で、よく見せてもらった絵本です。
しょっちゅう、酒やギョウザ、トンソクなどたべながら見ているので、各ページが黒ずんで、こげ茶黒色の熊がいっそう黒く見え、もう、ボロボロ寸前の感じが印象的。そして、ボヘミアン生活の匂いがしみついて、異様な臭いの?絵本であった。
なにしろバスネツォフの絵が深く愛くるしい抜群の絵で、彼の分厚い画集を見ると、初期のリトグラフクレヨンで描いた具合の、ボクトツとした絵が、文句なしにイイ。
たとえば、毎日使いなれた、すりへった木のスプーンのような絵本、といったら、いいか。
とにかく、本棚に、きちんとすまして、並んでいる絵本じゃなくて、抱きしめてグウグウ寝たくなるような絵本です。


『プンクマインチャ』
『プンクマインチャ』
大塚勇三・再話 秋野亥左牟・画

出版社:福音館書店
出版年:1992年

僕の東京放浪が開始された頃、絵の具やスケッチブックに混じって、この絵本がズタ袋の中に入っていて、新宿のジャズ喫茶で、エリック・ドルファーのサックスを大音量で聞きながら、何回も、ながめていた絵本。
だから、これもコーヒーや、タバコのシンセイなどの異様な臭いがしていた。
ビート詩人の本の中に、HOLY BARBARIANS(聖なる野蛮人)というのがあって、プンクマインチャは、そういう感じがする。
絵は、不思議な、土俗サイケデリックな絵で、すべて、地、空が、渾然一体となってブッとんでいる。
主人公の女の子の目が、印象的で、じっと見ていると、人間を離脱して、自分が、架空の生きものに、変わってゆくのがよくわかる。
再版されるとの事で、バンザイと、叫びましょう。


『100まんびきのネコ』
『100まんびきのネコ』
ワンダ・ガアグ・作 石井桃子・訳

出版社:福音館書店
出版年:1961年

とにかく絵が、とってもよい。ちょっと、漫画寸前?の『マックスとモーリッツ』のヴィルヘルム・ブッシュの質を感じながら、もっと、もっと、見せてよと、せがんでしまいたくなる。
親しみが、パッとわいて、ずーっと、親友みたいな絵本です。


  • 『もじゃもじゃペーター』 ハインリッヒ・ホフマン・作 佐々木田鶴子・訳 ほるぷ出版 1985年
  • 『ナンセンスの絵本』 エドワード・リア・作 柳瀬尚紀・訳 ほるぷ出版 1985年
  • 『年をとったワニの話』 レポルド・ショヴォー・作 出口裕弘・訳 福音館書店 1986年
  • 『おばけとかっぱ』 ヨゼフ・ラダ・作/絵 岡野裕・内田 莉莎子・訳 福音館書店 1979年
  • 『ぶたぶたくんのおかいもの』 土方久功・作/絵 福音館書店 1985年
  • 『馬の草子』 こどものとも年中向き2012年1月号 福音館書店
  • 『どうぶつはやくちあいうえお』 きしだえりこ・作 かたやまけん・絵 のら書店 1996年