瀬川康男の絵本
『かもとりごんべえ』
西郷竹彦・文 瀬川康男・絵
出版社:ポプラ社
出版年:1968年
99羽のかもに連れられ、飛んでいくごんべえは、あわに弾き飛ばされ、かさに運ばれ、最後に着いた先は、都の五重塔のてっぺん。さあ、そこからどうやって下におりたものやら……。昔話にはめずらしく、一人称「わし」で語られています。
また、空を飛ぶごんべえの背景に施された青色は、紙の裏から刷毛で大胆に塗られ(裏彩色)、そのかすれ具合がスピード感を表現したりと、様々に技法が工夫され描かれています。
後期の細密に描きこまれた作風とは異なり、おおらか且つ軽妙に描かれたかもとりごんべえは、このスケールの大きなほらばなしにぴったりと合っています。
『かっぱかぞえうた』
瀬川康男・作
出版社:福音館書店
出版年:1994年(こどものとも年少版202号) 1996年単行本化
「ひとつ ひめゆり ひょっこり かっぱ ふたつ ふしぐろ ふたごのかっぱ」と
リズムよく、韻を踏むかぞえうた。みずひき、よめな、いらくさ等、可憐な草花を手にし、装飾的に描かれたかっぱたちは、どこか愛らしく親しみが湧きます。
九つ、十では、八つまでに登場したかっぱたちが全員集合し、圧巻です。石膏下地の白を活かし、テンペラの鮮やかな色彩が美しい1冊。
『瀬川康男画集 いきとしいけるもの』
講談社・編
出版社:講談社
出版年:2011年
2010年に急逝した瀬川康男の画集。I.絵本、Ⅱ.タブローの二部構成で、それぞれ、画業の変遷を追いながら、瀬川の作品をたっぷりと紹介しています。
1960年代の様々な技法に取り組んだ初期の絵本の時代、江戸時代の丹緑本*に魅了され、手描き絵本に取り組んだ70年代、そして80年代以降の装飾的な作品……。また、タブロー作品の美しさには、息をのむばかり。数々の作品からは、制作にむかう画家の真摯な姿勢がうかがえ、瀬川康男の魅力が詰まった見ごたえのある画集です。
*丹緑本:墨一色摺りのうえに、朱、緑、黄色などを手で彩色した江戸時代初期の板本。
ちひろ この1冊
『ちひろ 秋の画集』
出版社:講談社
出版年:2010年
この秋、ちひろの季節の画集が刊行されます。その第一弾が『ちひろ 秋の画集』。
たわわに実る真っ赤な柿、秋の夕暮れのなか遊ぶ子どもたち、色づく木の葉……、
ちひろが秋という季節をすくいあげ、描いた作品の数々が掲載されています。
かぜ どこから ふくの ふゆ どこからくるの あき どこへいくの (いわさきちひろ1968年)
ところどころに添えられたちひろや息子の猛の言葉がアクセントとなり、詩画集を読むように楽しめる1冊です。
- 『つきをいる』 君島久子・訳 福音館書店 1962年
- 『ふしぎなたけのこ』 松野正子・作 福音館書店 1963年
- 『おしゃれなからず』 イソップ・原作 濱田廣介・文 偕成社 1964年
- 『いないいないばあ』 松谷みよ子・文 童心社 1967年
- 『たいようのぼうや』 ズデニェク・カ・スラビー・作 内田莉莎子・訳 学習研究社 1969年
- 『鬼』 今江祥智・文 あかね書房 1972年
- 『ことばあそびうた』 谷川俊太郎・詩 福音館書店 1973年
- 『西遊記(上)』 呉承恩・作 君島久子・訳 福音館書店 1975年 ※2004年福音館文庫として復刊
- 『流れのほとり』 神沢利子・作 福音館書店 1976年 ※2003年福音館文庫として復刊
- 『ふたり』 冨山房 1981年
- 『ぼうし』 福音館書店(こどものとも327号) 1983年 ※1987年単行本化
- 『虫のわらべうた』 福音館書店(こどものとも365号) 1986年
- 『清盛』 絵巻平家物語(五) 木下順二・文 ほるぷ出版 1987年
- 『だれかがよんだ』 福音館書店(こどものとも年少版161号) 1990年 ※1992年単行本化
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