2000年代 日本の絵本

トマトさん
『トマトさん』
田中清代・作

出版社:福音館書店
出版年:2002年

ある暑い夏の日、どったと木から落ちたトマトさん。本当はミニトマトたちのように小川で泳ぎたいのですが、重くて動けません。ぽろりと涙をこぼすトマトさんを、虫やトカゲたちが、ごろんごろんと転がして、小川のなかへ。どっぷんとっぷん泳ぐトマトさんはとても涼しそう。ぴったりの擬態語がここそこに使われ、声に出して読みたい絵本。田中清代は、ドライポイント(銅版画の一種)の柔らかな線に水彩で色をつけました。暑い夏に読むと、真っ赤に熟れたおいしい冷やしトマトが恋しくなるような絵本。


はしれ、きかんしゃちからあし
『はしれ、きかんしゃちからあし』
小風さち・文 藍澤ミミ子・絵

出版社:福音館書店
出版年:2008年

重い貨物を引いて走るのが大好きな機関車「ちからあし」。しかし、徐々に戦争の影がしのびよります。戦争の道具を運び、戦火で仲間を失い、ちからあしは、暗いトンネルの中をどっどっどっどっと石炭を真っ赤に燃やし、火の粉をふいて走りました。その姿からは、ちからあしの怒りが伝わってくるかのようです。そして戦争が終わり・・・・・・。戦前、戦中、そして戦後の復興を生きた蒸気機関車「ちからあし」の物語。30代から近所の操車場をテーマに木版画作品を作り続けていた藍澤ミミ子が70代で初めて手がけた絵本です。木版画、コラージュ、色鉛筆、パステルなどページごとに様々な技法を組み合わせ、工夫が凝らされています。これから長く読み継いでいきたい1冊です。


ぼくがラーメンたべてるとき
『ぼくがラーメンたべてるとき』
長谷川義史・作

出版社:教育画劇
出版年:2002年

ぼくがラーメンたべてるとき、となりでミケがあくびした。となりでミケがあくびしたとき、となりのみっちゃんが……、と次々につながっていく絵本。女の子がバイオリンを弾き、男の子が野球をしている同じとき、他の国にはパンを売る女の子や牛をひく男の子、そして倒れている男の子もいる。命について、平和について考えさせる絵本。大胆な構図とユーモアあふれる絵の長谷川義史は、現在最も活躍している絵本画家のひとりです。

ちひろ この1冊

おふろでちゃぷちゃぷ
『おふろでちゃぷちゃぷ』
いわさきちひろ・絵

出版社:童心社
出版年:1970年

「ねえどこいくの?いいとこいいとこ」「まってまっていまズボンぬいだとこ」と松谷みよ子がリズムよくつなぐ言葉には、子どものもどかしいながらも自分で色々なことができるようになったうれしさが伝わってきます。いわさきちひろの絵は、ぽちゃっとした子どものやわらかさ、肌のあたたかいぬくもりのある感触を、ひざこぞうや鼻の頭、指先など肌色にさしたピンク色から感じさせます。
ともに母である作家と画家によるこの絵本には、ふたりの母親としての実感や経験が活かされ、その愛情がたっぷりこめられています。