絵本でつなぐ「へいわ」のメッセージ:伊藤秀男(画家)

僕のおじさんはサイパンで戦死し、その弟のおじさんは、シベリアの収容所で病死した。おじさんたちが帰ってくるはずの家を妹の母がようやく養子を迎えて継ぎ、僕が生まれた。僕は上のおじさんと同じ名をもらった。一字変えて。「ヒデオがかえってきた」とおじいさんは喜んで隣近所に赤飯を配ったという。日本の戦後5年目の1950年の春の事であった。時折母がふいに語り出した戦争で死んだ二人のおじさんの話は、僕の心に深く残った。

伊藤秀男(日本)、2025年

伊藤秀男 『けんかのきもち』(ポプラ社)より 2001年

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◆絵本でつなぐ「へいわ」のメッセージ
戦後80年 ちひろと世界の絵本画家たち 絵本でつなぐ「へいわ」 の開催にあわせて、本展に寄せられた出品作家からのメッセージ、そして、広島で被爆した子どもたちのことばを、会期中、少しずつご紹介していきます。

◆開催中の展覧会:2025年7月26日(土)~10月26日(日)
戦後80年 ちひろと世界の絵本画家たち 絵本でつなぐ「へいわ」