「装いの翼展」学芸員による見どころ紹介①:いわさきちひろのワンピース
ちひろ美術館・東京で開催中の「装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子」展では、「装い」をテーマに、3人の女性作家の人生と表現を紹介しています。実際にちひろが愛用していた洋服もご覧いただけます。なかには、ちひろが戦前につくった洋服もあります。

1938年の正月映画として公開されたアメリカ映画「オーケストラの少女」に出演していた俳優ディアナ・ダービンが着ていた衣裳を見たちひろは、自らデザインしてワンピースを仕立てました。

書籍『装いの翼 おしゃれと表現と―いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』(岩波書店)の著者・行司千絵さんは、京都の展覧会でこの服を見たことをきっかけに、ちひろの人生に興味を持ったといいます。パフスリーブ、フリルがほどこされた胸元の切り替え、ウエスト部分のシャーリングなど凝ったつくりの優雅なワンピースからは、女学校を卒業した後、洋裁学校でも学んでいたちひろの腕の確かさがうかがえます。ちひろはどのような想いでこのワンピ―スを着ていたのでしょうか。
3人姉妹の長女だったちひろは、1939年、20歳のときに、家を継ぐため婿養子を迎えて結婚しました。もっと絵を学びたいという夢をあきらめたうえ、意に添わない相手との結婚でした。結婚式の後、中国・大連に赴任する夫を見送り、2ヵ月遅れて現地に向かう前日に撮られたのがこの写真です。

大連に発つ前日に妹・世史子(右)と 1939年
1939年6月、ちひろが20歳のとき、まさに第二次世界大戦が開戦される直前のことでした。華やかな装いに戦争の影が落とされていく時代でした。
▽開催中の展覧会:2025年10月31日(金)~2026年2月1日(日)
装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子
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