「いわさきちひろ やさしさと美しさと」作品のご紹介③

百年もの年代の差をこえて、わたしの心に、かわらないうつくしさをなげかけてくれるアンデルセン——。むかしふうの文章なのだけれど、その中にいまの社会につうじる、同じ庶民の悲しさをうたいあげているこの作家に、わたしは、ずいぶん学ぶことが多い。」いわさきちひろ 1964年

開催中の展覧会「いわさきちひろ やさしさと美しさと」の会期も、残り1週間となりました。ちひろの作品やことばから、彼女が描こうとした「やさしさ」や「美しさ」を探る本展では、ちひろ自身の強い希望で描いたアンデルセンの『絵のない絵本』もピエゾグラフ作品で展示しています。

いわさきちひろ 煙突掃除の少年『絵のない絵本』(童心社)より 1966年

屋根裏に住む貧しい画家の青年のもとに、月が毎夜訪れ、さまざまな国で見たことを語って聞かせる三十三夜の物語をおさめた『絵のない絵本』。光と闇が織り成す人の世の物語を、鉛筆と薄墨を用いて情感豊かに描き出したこの絵本は、いわゆる子ども向けの絵本ではない、若い人を対象にした新しいかたちの絵本シリーズの第一冊となりました。

◆開催中の展覧会(10/7~2024/1/14)
ちひろ美術館セレクション 2010→2021 日本の絵本展
いわさきちひろ やさしさと美しさと
※1/15(月)~2/29(木)は、冬期休館となります。