ラチョフ展の見どころ紹介① エフゲーニー・ラチョフって?
ちひろ美術館・東京で開催中の企画展「生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界」について、展示担当学芸員が、その見どころを全6回で紹介します。
第1回
エフゲーニー・ラチョフって?
ウクライナ民話絵本『てぶくろ』で知られる画家エフゲーニー・ラチョフは、1906年、ロシアのトムスクに生まれました。第一次世界大戦で父親を早くに亡くすと、トムスク近郊の祖母に預けられます。そこは、野生動物が身近に感じられる、シベリアの手つかずの自然が残された場所でした。白樺やヤマナラシの林でイチゴやキノコを集め、透き通った水のなかを泳ぐカワカマスや、夕暮れに飛んでいくガンの群れを眺める……。ここでの経験が、自身が動物画家になったきっかけであると、後年語っています。

エフゲーニー・ラチョフ 森の動物アパート『白樺皮の筒』より 1983年
1929年、23歳で、ウクライナ・キーウの出版社で挿し絵画家として働き始めたラチョフは、編集者から、子どもの本の絵を描くときに大切なふたつのことを教わります。第一に「小さな読者を理解し彼らに愛情をもつこと」、第二に「絵をつける文学作品を尊重すること」。ラチョフは生涯このことを胸にとどめ、のちに動物民話を描く際にも、民話のテキストが内包する登場人物(動物)たちの本質を、子どもにも分かりやすい方法で表現することに努めていました。きつねはずる賢く美しい、くまは人が良く力持ちだけれど不器用、おおかみは獰猛だけれど愚か……など、動物にこうしたイメージを重ねて絵を描くことが大好きで、楽しくて時のたつのを忘れてしまうほどだ、とも語っています。

エフゲーニー・ラチョフ ずる賢く美しいきつね 1956年
本展では、こうしたラチョフの動物のイメージがまとめられた連作「ロシア民話の主人公たち」から、4点を展示しています。ロシア民話によく登場する動物、うさぎ、きつね、おんどり、おおかみが描かれています。

「60年以上を私は子どもの本に捧げてきました。そしてこのことを残念には思いません。とても興味深い仕事ですから。」
真摯に小さな読者に向き合い続けたラチョフは、自身の画業をこう振り返っています。

ラチョフ57歳、1963年(提供:Vladimir Turkov)
▽開催中の展覧会 3月1日(日)~5月10日(日)
生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界
ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―
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