
65年ぶりの新発見原画とちひろゆかりの出版社・至光社
昨年、いわさきちひろとゆかりの深い出版社・至光社より、1958年から1962年までの絵雑誌「こどものせかい」などに掲載された作品32点が返却されました。

いわさきちひろ 「きょうも たのしい ようちえん」「こどものせかい」(至光社)1958年4月号より 1957年 ※安曇野館にて展示

いわさきちひろ 「やまも うみも」「こどものせかい」(至光社)1961年8月号より 1961年 ※東京館にて展示
1953年に創刊された「こどものせかい」に、ちひろは1958年4月号から1974年2月号まで絵を描きました。1968年6月号では、初めて自分で文章も書いた絵本『あめのひのおるすばん』も発表、その後も毎年1冊ずつ自作の絵本を同誌より発表しています。
編集者の武市八十雄は、絵の再現性にもこだわり、絵雑誌や絵本は画家と印刷に携わる人たちの力を結集した総合芸術であると考えていました。こうした武市の姿勢は、ちひろの制作に大きな影響を与えています。
ちひろ自身も1点もののタブローではなく、印刷を通して自分の絵を多くの人に届けたいと願っていました。

「こどものせかい」1965年9月号表紙

月の形にくりぬかれた表紙をめくると、
絵の全体があらわれる仕掛けになっています。
今回返却された作品はその初期の作品群にあたり、ちひろにとって重要な「こどものせかい」の仕事の全貌が明らかになりました。保存状態もよく、ちひろの画業や絵雑誌の研究にとっても貴重な歴史的価値のあるものです。
画家の著作権が確立していなかった1950年代から1960年代、印刷原稿として使用された後の原画は、破棄されることも多くありました。今回、至光社に大切に保管されていたことは、当時の状況から考えると奇跡に近いともいえるかもしれません。その後、ちひろをはじめ画家たちが著作権運動に取り組んだことで、原画が画家に返却されるようになり、ちひろ美術館の収蔵作品の礎となりました。

いわさきちひろ 母の日 1972年

いわさきちひろ ぶどうを持つ少女 1973年
今回の作品32点の返却について、至光社のみなさまに心から感謝いたします。
新発見の原画は、東京と安曇野、ふたつのちひろ美術館にて公開しています。
ぜひこの機会にご覧ください。
ちひろ美術館・東京:3/1(土)~5/11(日)
ちひろのアルバム
西巻茅子 はじめての絵本『ボタンのくに』そして『わたしのワンピース』
安曇野ちひろ美術館:3/1(土)~6/1(日)
戦後80年 ちひろと世界の絵本画家たち 絵本でつなぐ「へいわ」
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