理事長あいさつ

代表理事 山田洋次

練馬区の住宅地のなかに、遠慮がちにひっそりと建っている「ちひろ美術館・東京」と、北アルプスを望む広々とした高原にゆったりと屋根を拡げる「安曇野ちひろ美術館」。このきわめて対照的な風景のなかの二つの建物が、私たちの財団が運営する「ちひろ美術館」です。

ぼくには、いわさきちひろの柔らかな絵は、か弱い少年や少女、くじけそうになる弱い人間たちを、あらゆる意味での〝暴力〟からかばおうとしているように感じられます。雨上がりの水たまりに映る青い空を見てすがすがしい気持ちになったり、名も知らぬ小さな草花の美しさに感動したり、ありとあらゆる生命をいとおしく思う、人間が人間であることのあかしであるような柔らかな感性―ちひろは、それを断固として守りつづけた人だと思います。

月に一回か二回でいい、家族や恋人たちが連れ立って美術館に出かけて絵を見ながらゆったりと時間を過ごす、そんなことが日本人の暮らしのなかの習慣になればどんなにいいだろう、ぼくたちの国がそのような穏やかで平和な国であって欲しいと思います。ちひろの思いを大切に守りながら、われわれは美術館活動を推し進めていきます。ちひろ美術館を愛してくださるみなさん、これからもどうかよろしくお願いします。

公益財団法人いわさきちひろ記念事業団 代表理事 山田洋次 
(映画監督)

館長あいさつ

館長_黒柳徹子

子どもが大好きで、どの子にも幸せになってほしいと願い、子どもを描きつづけたちひろさん。そして、絵本のなかに、いまの日本から失われた、いろいろなやさしさや美しさを、描きたいと言っていらしたちひろさん。

ちひろさんの亡くなった3年後の1977年に、東京の練馬区下石神井の自宅あとに、「いわさきちひろ絵本美術館」(現ちひろ美術館・東京)をつくりました。「子どもって、こんなに可愛いの」「絵本の絵には、こんなにすばらしいものがあるの」、ということを知っていただきたくて。

私たちは、ちひろさんの絵だけでなく、世界で活躍する絵本画家の絵を、次の世代、その次の世代、もっと先の世代にまで伝えることができたらと考えて、集めてきました。1997年には、ちひろさんと世界の絵本画家の作品を、いつでもいっしょに見ていただけるように、安曇野ちひろ美術館を建てました。

今も、世界には戦火や貧困にさらされる子ども、豊かさのなかに暮らしながら暴力にさらされている子どもがたくさんいます。こんな時代だからこそ、ちひろさんや世界中の絵本画家が描いた「やさしさ」「美しさ」を、子どもたちの真っ白な心に、そして、大人の心に伝えていけたら、こんなうれしいことはありません。

ちひろ美術館(東京・安曇野)館長 黒柳徹子 
(女優・ユニセフ親善大使)