[表紙の作品]いわさきちひろ シクラメンの花のなかの子どもたち『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)より 1973

ちひろ自身が文も手がけた『戦火のなかの子どもたち』の冒頭の場面です。絵には詩が添えられ、「赤いシクラメンの/そのすきとおった花びらのなかから/しんでいったこの子たちの/ひとみがささやく。/あたしたちの一生は/ずーっと せんそうのなかだけだった。」と結ばれています。冬のアトリエには、シクラメンの鉢がいくつも飾られていました。ちひろはシクラメンの薄い花びらに、戦場で散った子どもたちのはかない生命を重ねて表現しました。絵本の連作中シクラメンの絵は七点、「南のくにのもえる赤い花びら」とメモのある、焔に変化した花びらから小さな手がのぞく未完の絵も残されています。