2010.3.1 /[表紙の作品]いわさきちひろ 「母の日」 1972年

ちひろは「(小さい子どもが)ターッと走ってきてパタッと飛びついてくるでしょ、あの感じなんてすてきです。」と語っていますが、この絵はまさに、幼い子
がカーネーションを渡そうと、お母さんに抱きついてきた感じが見事に表現されています。子どものやわらかな頬の感触、しがみついてくる小さな手の圧力、は
ずむような息づかいまでが感じられるようです。母親は後ろ姿で描かれていますが、やさしい表情を想像することもできるでしょう。こんな風に子どもを抱きし
めたことがある人は、自らの実感がよみがえるかもしれません。子どもを包み込む淡いピンクの色調が、やさしい母性を象徴しているようです。