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いわさきちひろ ききょうと子どもたち 1967年
清々しい秋の風、蝋燭の幻想的な灯り、雨あがりの空の輝き―ちひろは水に溶ける水彩絵の具の特性や、紙地の白の効果、さまざまな色彩を駆使して、「光」や「風」「空気」までをも表現しました。
本展では、ちひろが画家として歩み始めた1940年代から、晩年となる1970年代までの技法の変遷を追いながら、色使いの特徴や魅力をさぐります。
中期童画に見る色使い
1950年代から1960年代半ばにかけて、ちひろは「キンダーブック」や「チャイルドブック」、「こどものせかい」などの絵雑誌の仕事を中心に描いていました。
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十五夜の子どもたち 1965年
この時期の作品は、幅広い色相の色を1枚の絵のなかにバランスよく配置しているのが特徴です。「十五夜の子どもたち」では、緑や紫、桃色など、色とりどりの服を着た子どもたちが登場します。浴衣に描かれた紅葉の朱色は、青い背景と響き合い、一層鮮やかに感じられます。
雨の表現の変遷
ちひろは好んで雨の風景を描きました。色や形として捉えることの難しい「雨」を表現した作品には、各年代の技法の特徴を見ることができます。
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「あまやどり」 1958年
1958年の「あまやどり」では、雨を細い線で表しています。紫陽花の緑葉には白い線で、花の上には水色の線で描いています。
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小犬と雨の日の子どもたち 1967年
1960年代以降、ちひろは、水彩絵の具が水に溶けて広がる「にじみ」の技法を発展させていきました。「小犬と雨の日の子どもたち」では、絵の具の顔料が溜まることでできるにじみの際の線を縦方向に入れながら、雨を印象的に描き出しました。
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黄色い傘の子どもたち 1971年
1970年代の作品では、水をたっぷりと使い、淡い色を画面全体に大胆ににじませています。水彩が生み出す偶然性を駆使し、雨を表現しています。
ちひろの白-光・風・空気を描く
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光と風のなかで 1968年
「赤いと思えば赤く塗るし、紫だと思えば紫をつけた。空を黄色くすることもあれば、水を桃色に描いたりもする」とちひろは語っています。
1960年代後半以降、ちひろは、濃淡の変化をつけた色面に、紙地を残して形を白く浮かび上がらせる「白抜き」の技法を効果的に使って描くようになりました。黄土色の色彩のなかに、白いシルエットの少女がたたずむ「光と風のなかで」では、抽象的な色面から、少女が感じている風の心地よさや光のきらめきまでもが感じられます。
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