![](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/4c8d202d08e067cf32f291de27df90ed.jpg)
いわさきちひろ バラと少女 1966年
美しい色調やモダンなデザイン、いかにも着心地のよさそうな服を着ている子どもたちが登場するいわさきちひろの絵。こうした作品には、ちひろ好みのデザインやファッションセンスがちりばめられています。本展では、ちひろが描いたおしゃれな子どもたちに焦点をあてて紹介します。
あわせて、文化服装学院との共同企画として、服装科の学生たちが授業のなかで取り組んだ「ちひろの絵からイメージを拡げて制作した子ども服」をデザイン画などの資料とともに展示します。
私が一ばん好きだった洋服を思い出す。白いボイルの地に白いレースがついていた。ベルトは朱子(しゅす)織りのももいろのリボンで、うしろでむすぶようになっていた。母のお友達がはるばるフランスから送ってくださったのだ。町営住宅の小さな家に、この洋服は白鳥のように優雅におりたって私をどんなにしあわせにしてくれたことか。(中略)こがらな私が小学2年までしかきられなかった、ちいさな洋服だった。
いわさきちひろ 1970年
![いわさきちひろ春の花と子どもたち](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/d751d5aa224c7c353e326597da933953.jpg)
いわさきちひろ 春の花と子どもたち 1965年頃
子どもたちに語りかけながら
白い襟が印象的なワンピース、縞のセーターの配色の妙、モダンな柄のスカーフやリボン。いわさきちひろが描いた絵のなかの子どもたちは、とてもおしゃれです。
この子にはどんな服が似合うかしら……、ちひろは思わずつぶやきながら、絵筆をとっていました。
「バラと少女」では、ちひろは幼いころの思い出のドレスを、大好きなもも色で描きました。今日から幼稚園に通う少女が身につけたよそ行きのワンピースは、張りのあるサテンの生地でしょうか。お揃いのピンクのシックなデザインの帽子を目深にかぶらせたところは、日ごろから帽子のおしゃれを楽しんでいたちひろならではです。ギャザースカートの腰に結んだ大きなリボン、真紅のくつ、差し色となる水色のくつ下が、おしゃれな少女をより魅力的に見せています。
![後ろ姿のおさげ髪の少女](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/b35751a9d6395835724e8b6c7664bd90.jpg)
いわさきちひろ 後ろ姿のおさげ髪の少女 1970年
おさげ髪の少女が着ているピンクと紫の縦縞ワンピースは、ちひろの絵のなかにたびたび登場するお気に入りの服です。
「あまやどり」には、当時はやった半透明のビニール素材のレインコートに身を包んだ子どもがいます。1950年代から日本経済の発展とともに、化学染料や化学繊維、ビニール素材などがファッション界にも急速に普及し、ビビッドな色彩やおもしろい質感が加わります。なんでも着こなしてみる、自分を型にはめちゃいけないと語っていたちひろ。フェミニンなワンピースやシックなスーツを着こなす一方、新しい素材や質感を積極的に楽しむ一面も持っていたようです。
![あまやどり1958年](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/7e9d2715f6b1f7648ad281bb12df43bc.jpg)
いわさきちひろ あまやどり 1958年
ちひろと文化服装学院
まだ着物姿が一般的だったちひろの幼少期、岩崎家にはミシン室があり、ちひろたち三姉妹は母親お手製のモダンな洋服を着ていました。ちひろも娘時代から洋裁を得意とし、気に入った映画のヒロインの服をまねて手作りしたり、服のデザインを考えたりするのも好きだったようです。
![](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2017/06/fb5d4950c5dab2d1ea04c302d8dc1ee0-713x1024.jpg)
妹世史子(右)と 1939年
戦前の一時期にちひろが文化服装学院と深く関わっていたことは、あまり知られていません。文化服装学院は1919年に東京・青山に設けられた裁縫教授所を母体に、1923年に洋裁教育の学校として日本で最初に認定を受けた学校です。ちひろは1937年の女学校補習科時代(18歳)、後に文化服装学院の重鎮となる書家の小田周洋(おだしゅうよう)に師事し、藤原行成(ふじわらのゆきなり)流の和仮名の書を学びます。1940年ころには周洋の師範代として、文化服装学院の学生たちを指導しています。
ちひろの絵から飛びだした子ども服
本展のもうひとつの見どころは、ちひろの絵から忠実に再現、あるいは絵のイメージから展開された子ども服です。ちひろ生誕100年を記念した文化服装学院とちひろ美術館との共同企画として一昨年から準備を進め、2018年に文化服装学院服装科2年の学生たちが授業のなかで取り組みました。
各々好きなちひろの絵をもとに練り上げた約80点ものデザイン画が集まり、その中から10点を厳選して制作されました。
ちひろの絵さながらに、手書きのイラストやドット柄をプリントした生地から制作された服。
![緑の風のなかで](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/05048b68d563dc49017ffc8ecfb73737.jpg)
いわさきちひろ 緑の風のなかで 1973年
![グリーンドットのワンピース](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/71d671e283062fd8fed24a002d2c608d-699x1024.jpg)
「緑の風のなかで」のグリーンドットのワンピース スタイリング:本谷智子 撮影:北嶋宏美
「はなぐるま」の絵からイメージをふくらませて、色とりどりに染め上げたオーガンディ地で作られた可憐な花が70個以上もあしらわれた花のドレス。
![](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/429ecaa728499ea16ba5f28974ed3dde.jpg)
いわさきちひろ はなぐるま 1967年
![花のワンピース](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/600f3f517786103dfac029c204090558.jpg)
「はなぐるま」の花のワンピース スタイリング:本谷智子 撮影:北嶋宏美
「バラと少女」のピンクのドレス(写真右端)では、ちひろの絵の柔らかな雰囲気を表現するために、本生地に薄いジョーゼットを重ねてやさしい仕上がりを追求しています。
![ちひろの絵から飛び出した子ども服](https://chihiro.jp/wp-content/uploads/2019/02/35bdaf6c311bd760c4969757281e367f-1024x503.jpg)
ちひろの絵から飛び出した子ども服
クリエイティビティにあふれた学生たちの子ども服を、ちひろの絵とともにお楽しみください。
子ども服製作:文化服装学院服装科2年生 スタイリング:本谷智子 撮影:北嶋宏美
※開催中は、学校法人 文化学園の学生と教職員の方は、学生証・職員証のご提示で、入館無料となります。
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