絵本でつなぐ「へいわ」のメッセージ:「お母さん。おかあさん。」
その朝、兄さんと私は、二かいであそんでいました。ピカッと光ったとおもうと、急に家がたおれました。みんな大さわぎになりました。…
あくる朝、お兄さんたちが私をおこして、
「お母さんがしんだ。」
といわれました。私はびっくりして、すぐお母さんのところにいって、
「お母さん。」
と声をかけたが、お母さんの声はきこえません。私はかなしくなって、二、三べん「おかあさん。」
といいました。でもお母さんの声は、やはりきこえてきません。私はお母さんのむねの上にうつむいて、なくばかりでした。それから、そうしきがはじまりました。私は、お母さんのへり(そば)から、はなれるのはいやでした。でも、仕方がない。おそうしきがおわると、すぐびょういんにいきました。そこで、いつまでもいました。そうしてある朝、起きてみたら、お兄さんが死んでおられました。
そうして、みんなつぎつぎと死んでいかれ、兄ちゃん二人と私がのこりました。
山代記久子 小学校五年生(五歳)より、一部抜粋
*記載は作文を書いたときの学年。( )内は、原爆投下当時の年齢。
ことば:『1945年8月6日 あさ8時15分、わたしは』(童心社、2025年)より

いわさきちひろ ものかげの少女『わたしがちいさかったときに』(童心社)より 1967年
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◆絵本でつなぐ「へいわ」のメッセージ
戦後80年 ちひろと世界の絵本画家たち 絵本でつなぐ「へいわ」 の開催にあわせて、本展に寄せられた出品作家からのメッセージ、そして、広島で被爆した子どもたちのことばを、会期中、少しずつご紹介していきます。
◆開催中の展覧会:2025年7月26日(土)~10月26日(日)
戦後80年 ちひろと世界の絵本画家たち 絵本でつなぐ「へいわ」
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