[表紙の作品]いわさきちひろ 秋草のなかの少女 1969

赤茶の花穂をつけたワレモコウ、銀色の穂を広げるススキ、小さな薄紫の花を咲かせたノコンギクなど、秋の草花を見つめながら少女がたたずんでいます。左下に描かれているのはノブドウでしょうか。緑から黄色、青紫、赤紫と、変化を見せながら色づく実が、秋の深まりを感じさせます。
花が大好きだったちひろは、80種を超える花を絵のなかに描きました。野の草花や枯れ草にも心を寄せ、季節の移ろいのなかで、それぞれの植物が見せる個性や風情を丁寧に描き出しています。ふと歩みを止め、憂いをおびたまなざしで秋の草花に見入る少女は、ちひろ自身にも重なります。