2016.2.20 /[表紙の作品]いわさきちひろ 「花の精」 1970年頃

頬杖をついた少女と赤や黄のひなげし。重なりあう花の形や質感は水彩絵の具の濃淡とにじみで表現されています。おさげ髪の先にくっきりと結んだりぼんと、少女の右辺に差した花影のような淡い水色が、柔らかに広がる画面のなかにも奥行きのある空間を生み出しています。少女を包みこむような花々は花冠のようでもあり、少女が花の化身、花の精のようにも見えてきます。透けるようなひなげしの花びらに、繊細で感受性豊かな少女の心を重ねて描いたこの作品は、華やかな色合いを持ちながらもどこか静謐さを漂わせています。ちひろ自身、子どものころの柔らかな感性を生涯持ち続けた人でした。