古典文学を描く
赤羽末吉は、日本の古典文学を絵本にすることにも熱心に取り組み、史実などの徹底した取材と研究を重ね、日本の伝統美術の絵画技法を巧みに取り入れて表現しました。
中世歴史文学「義経記」などをもとに源平の戦いを描いた『源平絵巻物語』で、赤羽は「歴史物語のなかで源平のたたかいほど壮大華麗で、しかもこれほど人間のかなしさをたたえた話はほかにないのではないかと思う」と語っています。
『源平絵巻物語 第七巻 壇の浦のたたかい』で、赤羽が描いた二位の尼が幼い安徳天皇を抱き海へ身を投げる場面を描いた作品を、現在出展中です。展示室のなかで光を帯びているように見え、目を奪われます。
美しい表現は見るものの胸をつき、二位の尼と幼い安徳天皇が運命の渦へ飲まれ、平家が滅亡へとたどるさまを、すべてこの一場面から悟らせてしまいます。
本展では、ほかに「古事記」を描いた『日本の神話』、「今昔物語集」から題材を得た『春のわかれ』、『鬼ぞろぞろ』を紹介しています。著された時代により、巧みに筆致や技法を変えていることに驚かされます。赤羽の、子どもたちに日本の風土や伝統美術を伝えたいという思いを感じる展覧会です。
生誕111年 赤羽末吉展
日本美術へのとびら
★いよいよ、9月26日までの開催です。
同時開催:ちひろの花鳥風月
https://chihiro.jp/tokyo/exhibitions/
(K.R.)
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