ちひろ美術館スタッフ「お気に入りの作品」⑨

臨時休館中のちひろ美術館(東京・安曇野)から、おうちで美術館を楽しんでいただける情報を発信しています。
約9,500点あるいわさきちひろの作品のなかから、ちひろ美術館のスタッフが、ひとりひとり「お気に入りの作品」を1点選び、作品への想いをリレー形式で語ります。

【ちひろ美術館スタッフ「お気に入りの作品」⑨】

いわさきちひろ 抱きあうふたり 『愛かぎりなく デカブリストの妻抄』(童心社)より 1968年

ちひろといえば、可愛らしい子どもや四季折々の花の作品でよく知られていますが、実は魅力的な大人を描いたものもたくさんあります。
なかでも私が好きな1枚はこちら。
時は19世紀ロシア。反乱が失敗し、シベリアへ流刑になった青年将校たちを追う妻が、ついに鉱山で強制動労中の夫と再会する場面です。ちひろ自身も、理想に燃える夫を深く愛していました。誰がなんと言おうと、自分はこの人を信じ、支えたい・・・という、ー途な想いが、夫の胸に顔を埋めた彼女の、透き通るようなうなじから伝わってきます。なんてロマンチック!どんな困難に遭っても、希望を捨てず、互いに信じ、支えあうことの尊さを伝えてくれる作品です。

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次回は、安曇野ちひろ美術館で学芸を担当しているY.Y.さん。
わがままな王様と、機転の利いたおきさきとのやりとりが楽しい絵本『りこうなおきさき』より、お気に入りの一点です。

次回は、安曇野ちひろ美術館ブログよりお届けします。