[表紙の作品]いわさきちひろ チューリップのある少女像 1973年

控えめでやさしく凛としたチューリップの花のイメージが、思春期を迎えた少女の横顔に重なります。際立つ鉛筆の描線からデッサン力の確かさが伝わってきます。量感のある頭部にはあえて色を乗せずに、やわらかな髪を鉛筆の芯の腹を使って、流れのあるダイナミックな筆致であらわしました。額から鼻筋にかけては鉛筆を立てて筆圧を変化させながら細くシャープな線で、小鼻から唇、あご、のどへは鉛筆をやや寝かせた緩やかな線で描き、肌の質感やわずかな陰影をも感じさせます。ちひろの画業の後期を代表するこの作品は、雑誌「子どものしあわせ」1974年3月号の表紙として発表されました。