水彩絵の具を駆使し、やわらかで清澄な、独特の色調を生み出したちひろ。西洋で発達した画材を用いながら、水をたっぷり使ったにじみやぼかし、大胆な筆使いを活かした描法などは、むしろ中国や日本の伝統的な水墨画に近い表現をみることができます。何気なく描かれたようにみえる絵の背後には、さまざまな技法がかくされています。

緑の風のなかの少女 1972年

1白抜き

白い紙の地色を残して、その周りに色を塗ることで、帽子の形を表している。
2たらし込み

たっぷりと水を含んだ筆で茶色を薄く塗り、その色が乾かないうちに濃い茶色をおく。
濃い色が薄い色ににじみ込んで乾き、偶然的な色のたまりができている。
3渇筆法

筆に水をあまり含ませないで、絵の具をかすれさせている。
4潤筆法

筆に水を多く含ませて、絵の具をにじませている。絵の具が乾く前に別の色をおくと、色が混ざり合い、複雑な色調が得られる。