テーマブックス
vol.29アンデルセンの絵本
【開館40周年記念 Ⅰ/日本デンマーク国交樹立150周年】 ちひろと世界の絵本画家コレクション わたしのアンデルセン をちひろ美術館・東京で開催中です。[ 5月14日(日)まで ]
本展にちなみ、さまざまな画家の手がけたアンデルセンの絵本を集めました。

- 『アンデルセン童話 すずの兵隊』
フェリシモ出版
2009年- すずでできたおもちゃの兵隊のうち、ひとつだけ一本足のものがありました。一本足のすずの兵隊は、紙でできた踊り子に恋をします。すずの兵隊は窓から落ちて、川に流され、次々に恐ろしい目にあいますが、ふしぎな運命の力によって、再び持ち主であった男の子の家に戻ってきます。紙の踊り子に巡り合えたよろこびも束の間、兵隊はストーブに投げ込まれてしまいます。すると炎のなかに踊り子も飛んできて…。目まぐるしく場面が変化していくなかで、すずの兵隊はいつも銃を担いで敬礼をした姿勢のまま無表情に小さく描かれています。運命に翻弄される姿は、すずの兵隊が秘めた心情への共感を誘います。
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- 『ぶたかい王子』
福音館書店
1967年- 小さな国の王子が、皇帝のお姫さまに求婚するため、ばらの花とナイチンゲールを贈りますが、お姫さまは見向きもしません。王子はぶた飼いに変装して、めずらしいおもちゃをこしらえ、それを欲しがるお姫さまにキスを要求します。はじめは怒りながらも、どうしてもおもちゃのほしいお姫さまは…。見せかけにとらわれてほんとうの価値を理解しない者を皮肉った、痛快な童話です。 オーストリアの画家ツヴェルガーは、アンデルセンをはじめ、世界の古典文学の絵本を好んで手がけています。浮遊感のある空間、淋しさをはらんだ繊細な人物描写 ― ツヴェルガーの絵画表現によって、よく知られた古典文学が新鮮な印象でよみがえります。
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- 『はだかの王さま』
プロジェクトアノ
2005年- むかし、美しい服がなにより好きな王さまがいました。ある日、町に機織り職人を名乗るふたりのいかさま師がやってきて、自分たちが織る布は誰もみたことがないような美しい布で、ただ不思議なことに「地位にふさわしい仕事をしていない人や、愚かな人」には見えないというのです。布が見えないとは王様も家来も言えず、ありもしない仕立てた服を着るふりをして町へパレードに。大人たちが口々に誉め称えるなか、「王様は何も着てない」と叫んだのは小さな子どもでした。地位の高い人が、周りに直言する人もなく都合のいいことだけを信じて真実を見誤ることへの風刺を込めた童話です。チェコのアニメーション作家としても知られるヨゼフ・パレチェクは、パステル調のやわらかな色彩で、この滑稽な物語をコミカルに描いています。
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- 『バーナデットのモミの木』新装版
西村書店
1999年- 森の小さなモミの木は、早く大きくなってどこかへ行きたいと願っていました。ある年の冬、モミの木は伐り倒されて、ついに憧れのクリスマスツリーになりました。色とりどりのオーナメントや人形やおもちゃで飾り付けられ、てっぺんには金色の星がついています。最初は有頂天だったモミの木ですが…。森にいたころ、日の光や風が小さなモミの木にかけたことばは、「ここにいることを、よろこびなさい」でした。「憧れ」に満ちた子ども時代を愛おしむように、ままならない人生の悲哀を静かに語りかけてきます。イギリスの自然豊かな田舎で育ったバーナデット・ワッツは、森の植物や花のある庭の風景など、物語の舞台を繊細なタッチで描き出しました。
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- 『アンデルセンの絵本 ナイチンゲール』
小学館
2004年- むかし、中国にある皇帝がいました。その立派な宮殿のまわりには広い庭、森、海が広がり、浜辺の木に一羽のナイチンゲールという鳥が住んでいました。世界中の旅人がこの都を訪れると、その歌声に感動し、詩や散文に記したため、噂が皇帝の耳に届きます。ナイチンゲールの歌声をまだ聞いたことのない皇帝は、家来にその鳥を連れてくるよう命じ、ナイチンゲールは見事な歌声を彼の前で披露し、感涙をさそいます。とある日、日本のミカドから、豪華な作り物のナイチンゲールが届けられ、本物のナイチンゲールと一緒に歌わせようとすると…異国の風物や衣装を、太田大八は工夫をして描き、特に病床で死に神と出会う場面の不気味さは印象に残ります。
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- 『赤いくつ』
女子パウロ会
2004年- あるところに、カーレンという母親のいない女の子が、親切なおばあさんに育てられていました。堅信式のためにドレスと靴も買ってもらいますが、それが赤い踊り用の靴だということは、目の悪いおばあさんは気づきません。教会の入り口にいた靴磨きに、その靴が教会にふさわしいものではない、とカーレンは忠告を受けても耳を貸さず、赤い靴に心を奪われていました。ある日、おばあさんは重い病気になりますが、カーレンはダンスパーティーに赤いくつを履いて出かけてしまいます。すると靴が踊りを始め…。このお話は、アンデルセンが堅信礼のときに初めてはいた編み上げ靴が嬉しく、そのことばかり考えていたという体験にもとづいています。表紙からも分かるように、カーレンや登場人物は人形として描かれています。人形劇の舞台でくりひろげられるドラマ、と考えれば、少しはお話の残酷さが薄まるでしょうか。













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