ちひろの石神井の家
1952年の春、ちひろたち一家は念願の新居に移り住みます。以降、亡くなるまでの22年間をここで暮らし、多くの作品を生みました。ちひろは次のように書き残しています。「十年の歳月は、ひろくもない庭の樹木をみんな大きくし、家のまわりから緑がむんむんおしよせる。部屋の二間程前にそそりたっていたとなりのコンクリートの塀には蔦がみごとにのび、庭木の根本には苔がむしてきた。ここで私は結婚十周年を過ぎ、一人息子は九歳になった。そして息子の愛する友達たちも、この家のまわりで共に丈夫で、元気に大きくなっている。(中略)蔦とつるばらと子どもたち、十年の歳月がつくりあげたこの家の生活は、私には本当にすてがたい。」