ちひろの花と子ども
花と子どもは、ちひろが最も多く描いたモチーフです。移りゆく季節のなかで成長する子どもたちの無垢な心と体を、身近な自然と重ねあわせて描いています。1963年以降、余白を多く取った画面に、花を前方に子どもを後方に配した構図を好んで描いていますが、ときには、花を大きく、子どもを妖精のように小さく描くなど、変化に富ませています。こうした構図は、現実にはない遠近感をつくり出しますが、不思議と違和感はありません。花は、下からだけではなく、上からや左右からも描かれ、さまざまに工夫がされています。花と子どもを合わせて描くことで、親和に満ちた雰囲気が生まれ、さらに響き合い豊かな情感が醸し出されます。